労働者の権利
労働者の権利は、世界と日本の労働者の200年以上にわたるたたかいの積み重ねによって、勝ち取ってきたものです。
現在の日本では、憲法の第25条で「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と生存権を保障し、第27条で「すべての国民は勤労の権利を有し、義務を負う」「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と労働権を保障しています。これに基づいて、労働基準法などの労働者を保護する法律がつくられているのです。
また、第28条では「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と明記し、労働者が労働組合をつくり、加入し、組合活動を行う権利、つまり団結権、そして経営者の誠実な交渉を義務付けた団体交渉権、さらにストライキなどの争議権を保障しています。その具体化として労働組合法をつくり、これらの権利に反する経営者を不当労働行為として処罰するようにしているのです。
労働組合をつくることは、労働者の当然の権利です。労働組合をもってはじめて労働者は経営者と対等になれるのです。
このような、たたかいの成果としての憲法や労働者保護の法律をよく知り、明るい職場をつくるため活かしていきましょう。
なぜ労働組合か
労使関係のトラブルの解決にあたっては、各地の労働基準監督署や労働局、自治体のあっせん窓口、労働審判、弁護士などが有効性を持っています。
しかしこれらの機関は違法性が明確なものに限られるとか、それほど権限がないとか、一過性の要素が強いなどの制約が多いといえます。
例えばサービス残業で問題企業に労働基準監督署から是正勧告があってその時は是正しても、ほとぼりが冷めるとまたぞろ同じことを繰り返す事例に度々出会います。問題を告発した労働者に対する雇用主側の報復の危険性も強いと言えます。
しかし、それらに比べ労働組合は頼りになります。
労働組合は、もともと使用者に対し労働者の力が圧倒的に弱いことを前提に、憲法、労働組合法で団結権(労働組合を作る・入る権利)、団体交渉権(会社と労働者・労働組合の話し合い・交渉)、団体行動権(ストライキなど)が認められています。
またそれらの実効性を確保するため、使用者が労働組合に対しやってはいけないことを決めています。
つまり組合員であることを理由に解雇や賃金引き下げをやったり、労働組合との話し合いである団体交渉を拒否したり、労働組合と組合員の行動に干渉したりすることを法律違反の「不当労働行為」として禁止しています(労働組合法第7条)。
よく考えれば、労働組合のない労働者の選択肢は究極的には2つしかありません。
一つは使用者の言うことを何でも黙って聞いて働き続けるか、もう一つは堪忍袋の緒が切れて会社を辞めるかのどちらかしかないのです。
私たちはそういう労働者に、第三の道である「労働組合をもっと使おう」と呼びかけています。会社に労働組合がないからといって諦めることはありません。
または会社に組合があっても頼りにならないと嘆くこともありません。
全国各地に、一人から加入できるユニオン・地域労働組合が多くあります。「合同労働組合ユニオンジャパン」のその一つです。
勇気を出してお近くのユニオンに相談の連絡を入れてみるのも一つの方法だと思います。親切に対応してくれるはずです。
そしてよく話し合って納得したら労働組合に加入して会社と交渉することです。
新しい人生がはじまるかもしれません。
そういう労働者を私たちはたくさん知っています。
労働組合の優位性
いま多くの労働者が地域の労働組合・ユニオンに加入して、理不尽な経営者と闘い、成果を上げています。
不法不当な経営者の横暴を許さないと労働者は立ち上がっています。
それを可能にしているのが地域労働組合・ユニオンです。
泣き寝入りなどしなくて堂々と胸を張って生きていけるのです。アメリカでは職場の過半数を組織しない限り団体交渉権をもつ労働組合として承認されないという事情があるようですが、日本は違います。
地域労働組合・ユニオンは一人でも入れるところもありますし、その一人の労働者の問題で会社と団体交渉ができます。
もし経営者がその団体交渉を拒否したら、法律違反に問われます。
労働組合法にいう「不当労働行為」に該当することになります。
不当労働行為とは、労働組合法第7条で規定されている、経営者が労働組合と組合員に対してやってはいけないことです。
主に3つあり、第1は、労働組合加入を理由に解雇や賃金カットなど「不利益な取扱い」をすることです。
第2は、正当な理由がなくて「団体交渉を拒否」することです。
第3は、労働組合に経営者が「支配、介入」など干渉することです。不当労働行為は明確な憲法・法律違反です。
しかし懲りない経営者は法律違反を承知で、不当労働行為を行う可能性があります。
その場合は労働組合法にある労働委員会制度を使って、不当労働行為を是正・謝罪させ、解雇撤回など原状回復をさせます。
最終的には、労働委員会や裁判所の決定(命令とか緊急命令とか言います)に従わない場合は、経営者に「1年以下の禁錮もしくは100万円以下の罰金」が科せられます。
労働組合はこのように、憲法・労働組合法などで保護された大きな強制力をもっています。
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